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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

白い窓掛けの理由がやっと判明った。女は百燭の電光と、白麻の窓掛けの強烈な反射で、相手の眼を眩まそうとしているのだ。

私はこの驚くべき事実に対して眼を瞠らない訳に行かなかった。

二人は赤の他人なのだ。他人も他人、全くの初対面で、しかも女は何かしらバード・ストーン氏に対して敵意を持っているのをバード・ストーン氏が感付かずにいるのだ。氏の困った表情と、額の汗が何よりも雄弁に、そうした事実を証拠立てている。そうしてその事実が間違いないという事を、もう一度私の家の中で主人らしく取り澄ましている氏名不詳の女の態度が、しとやかに裏書きしているのだ。私を欺くための芝居では断じてない。

しかも、そうした事実は更に、紫のハンカチと、J・I・Cとが全然無関係である。否、むしろ讐敵同士かも知れない……という驚愕すべき事実を、いとも儼然と証拠立てている事になるではないか。私の第六感によって推理した事件の真相の中心となるべき事実が、全然一場の無意味な幻覚に過ぎなかった事を、余りにも如実に裏書きしている事になるではないか。

私はそう気付くと同時に、私の頭の中に築き上げられた推理の空中楼閣が、早くも根柢から土崩瓦解し初めたように感じた。