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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
リスリンの涙を流す銀幕スターなんか糞でも喰らえと云いたい位である。現在嘘と知っている私でさえも、まともにこの女の手にかかったら嘘と知りつつパパにされてしまうかも知れない……と気が付くと、思わずぞっとさせられた位であった。まして何も知らないストーン氏が、どうして参らずにおられよう。如何にも尤も至極という風に幾度も幾度もうなずかせられたのは、はたから見て滑稽とはいえ、当然過ぎるほど当然な事であった。
「……そうですねえ。ほんとうにそうですねえ。それでは、いつでもお二人でこの家にお出でになるのですねえ」
「いいえ……あの……一緒には居ないのでございます」
と女はすこし顔を上げた。
「……平生は妾は遠方の下宿に居るのでございますが、叔父が家を留守にする時には、いつもどこからか速達便や電報で妾を呼び寄せるのでございます」
ストーン氏はこの言葉を聞くとやっと仔細が判然ったらしく点頭いた。けれども、それと同時にいよいよこの女に興味を持ち初めたらしく身体をすこし乗り出して来た。
「……はーい……それでは貴女の御両親は……」
「わたくしには両親も何もございませぬ。ただ叔父一人を頼りに……致しているのでございます」