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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
そんな疑いのある者は喚び起して眼の球を見れば亢奮して充血しているのか、睡眠不足で充血しているのか、又は、酒のためか、病気のためか、それとも本当に安眠していたのかという事が、今迄の経験上、大抵一眼でわかるので、いよいよ見極めが付かぬ時は、その手段を執るより外に方法はないのである。
問題の第十四号室は、宮城の方に向って降りて行く階段の処から右へ第五番目の室であった。その室の内外は最早、既に、鑑識課の連中が、志免警部の指揮の下に、残る隈なく調べ上げている筈であったが、私は念のため入口の扉に近付いて、強力な懐中電燈を照しかけながら、その附近に在る足跡を調べて見ると、すぐに眼に付いたのは大きな泥だらけの足跡で、入口の処で、扉を推し開くために左右に広く踏みはだけてある。これは疑いもない岩形氏の足跡で、岩形氏が昨夜泥酔して帰った事実が容易に推測される。それから私は黄色くピカピカ光っているワニス塗りの扉にも、無造作に懐中電燈の光りを投げかけてみると、扉の上半部に在る大きな新しい両手の指紋の殆んど全部と、把手の上に在る右手の不完全な指紋が直ぐに眼に付いた。しかも、それ等の指紋には一つ残らず、ハッキリと白い泥の粉末が附着しているのであったが、これは矢張り今の推測を裏書するもので、岩形氏はどこかで酔っ払って転んで、手を泥だらけ