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きょくばだんの「トッテンカン」

曲馬団の「トッテンカン」

下村 千秋

「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年9~11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,620 字 · 34 页

青空文庫

八

これで新吉は、自分の思う通り、曲馬団の仲間に入ることが出来たのです。

八

曲馬小屋は、町の通りへ、もう立派に出来上がっていました。屋根にはイルミネーションがつき、前面には金銀の垂れ幕が下がり、幾本もの旗がにぎやかに立ち並び、すべて新吉の町に造ったものと少しも変わりませんでした。

つい昨日までは、この小屋の中をのぞいて見ることも出来なかったのに、今日の新吉はもう曲馬団の一人となってしまって、この立派な小屋が自分の家なのです。新吉は、あんまりうれしくて、これは夢ではないかとさえ思いました。

新吉はうれしさのあまり、おがくずの敷いてある円い演技場を、ぴょんぴょん飛びまわっていると、出入り口の垂れ幕のかげから、一人の少女と、それより年の多い女の人が出て来ました。よく見ると、昨日の夕方、田舎の停車場でいろいろと新吉に忠告してくれた二人でした。二人はちょっとおどろいたように目を円くしていましたが、

「お前はとうとう仲間入りをしてしまったのね。」と年の多い方の女が言いました。それからまた、

「もういやになっても、この仲間から出られやしないよ。」と言いました。

「ほんとねえ、かわいそうね。