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きょくばだんの「トッテンカン」

曲馬団の「トッテンカン」

下村 千秋

「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年9~11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,620 字 · 34 页

青空文庫

「よした方がいいよ、トッテンカン。」とわか姉さんは不安そうに言いました。

「だって僕がよしたら、きえちゃんがしなきゃあならないじゃないか。あんなに、立てないほど弱っているきえちゃんがやったら、それこそおっこちて死んじゃうよ。」

「だから、だれもしないのさ。」

「そしたら、こんどはわか姉さんが罰を食うじゃないか。」

「かまやしないよ。」

「いやだいやだ。僕がやれば、みんな助かるんだもの。僕はどうしてもやるよ。僕はね。あのファットマンの背中でする芸なら、なんでも失敗しないという自信があるんだからね。そんなに心配しないでやらせてくれよ。」

わか姉さんも、こんなに言っている新吉の決心を止めることは出来ませんでした。それにわか姉さんは、下に立って竹棒を支える芸をしているのだから、もし彼がおっこちるようなことがあったら、下からうまく救ってやろうと、心の中で考えたのでした。

わか姉さんは幕のかげに新吉をかくして、そこでお化粧をしてやりました。白粉をつけ、頬紅、口紅をつけ、まゆずみを引き、目のふちをくま取り、それからきえちゃんの芸服を着せ、絹の三角帽をかぶせました。少し離れたところから見ると、きえちゃんそっくりになりました。