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さいこにほんのじょせいせいかつのこんてい
最古日本の女性生活の根柢
折口 信夫
「女性改造 第三巻第九号」1924(大正13年)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,493 字 · 19 页
ところが川岸に残した愛犬が、その島に向いて吠えたので、そこに居ることが知れて、天子が出向いて連れ戻られた。印南の地名は、隠れる・ひっこもるなどの意の「いなむ」という語の名詞形から出たのだといふ。島の名も、かくれ妻という意だとある。「いなみづま」言いかへれば、逃婚ということになる。奪掠婚に対して、逃走婚という方法を考えに入れねば、奪掠の真意義もわかりにくかろうと思う。
地方豪族の娘は、その土地の神の巫女たる者が多い。ことに神に関したことのみ語る物語の性質から見ても、これらの処女が、巫女であったことは察せられる。巫女なるがゆえに、人間の男との結婚に、これまでの神との仲らいを喜んで棄てるように見えては、神にすまなくもあり、その怒りが恐ろしいのである。それで形式としても、逃走婚の姿をとらなければならなかった。また真実、従来の生活と別れることの愛着の上から言っても、自然にもそうなったであろう。弟媛のごときはその例で、原則としての巫女の処女生活を守り貫いたわけである。大郎女の方は、あんなに逃げておきながらと思われるほど、つかまったとなると、きわめて従順であったようである。