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つきかげ

月かげ

豊島 与志雄

「婦人公論」1924(大正13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,867 字 · 14 页

青空文庫

掛け声をしながら、拳を振り上げざま、カミを出すぞといわんばかりに指を開きかけて、そのままカミを出すと、彼は二本の指をぱっと開いて勝った。

その瞬間に、彼はにやりとしてほっと吐息をしたが、何故か眼を伏せて黙り込んでしまった。

「駄目よ、今のは八百長だから。」

お光が不意にそんなことを云った。それが何かしら私の気持を害した。

「じゃあも一度やり直して見よう。君、も一度やって、八百長でないところを見せてやろうじゃありませんか。」

「やりましょう。」

そして私達はまたジャンケンをしなおした。彼は何だか気抜けがしたようにぼんやりしていた。それに反して、私は妙に真剣になりだしてくるのを感じた。所が勝負にはまた負けた。も一度挑んだ。此度は勝った。そうなるとどちらが勝ちか分らなくなって、何度も何度もやり直した。勝ったり負けたりしてはてしがなかった。そのくせ妙に気乗りがしてきて、はっきり勝負をつけないでは止められなくなった。彼もまた次第に興奮してきた。

「もうお止しなさいよ、馬鹿馬鹿しい。」

一番年上の女にそう云われると、なおそれに反抗してみたくなった。

「一体何のためのジャンケンなの。