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つきとてぶくろ
月と手袋
江戸川 乱歩
「オール讀物」文藝春秋新社、1955(昭和30)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,541 字 · 80 页
やっぱり鍵がかかっている。
「オーイ、股野君、そこにいるのか。股野君、股野君……」
答えはない。
「仕方がない。また錠前破りですね」
「やって見ましょう」
警官は例の針金を取り出して、鍵穴をいじくっていたが、前よりも早く錠がはずれて、ドアがひらいた。
ふたりはすぐに室内に踏みこんで行ったが、まっ暗ではどうにもならぬ。克彦は心覚えの壁をさぐってスイッチをおした。
電燈がつくと、ふたりの目の前に、茶色のジャンパーを着た、長髪の男が倒れていた。
「アッ、股野君だ。このうちの主人です」
克彦が叫んで、そのそばにかけよった。
「さわってはいけません」
警官はそう注意しておいて、自分もじっと股野の顔を覗きこんでいたが、
「死んでいますね。頸にひどい傷がついている。扼殺でしょう。……電話は? このうちには電話があったはずですね」
克彦が事務机の上を指さすと、警官は飛んで行って受話器を取った。
電話をかけ終ると、ふたりで二階と一階との全部の部屋を探し廻ったが、夫人も女中も不在であることがわかった。
「犯人は多分、われわれと入れちがいに、裏口から逃げたのでしょうが、もう追っかけても間に合いません。