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つきとてぶくろ
月と手袋
江戸川 乱歩
「オール讀物」文藝春秋新社、1955(昭和30)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,541 字 · 80 页
られたように見せかけたことも、何から何まで、すっかりバレてしまっているじゃありませんか。この上、明智さんが乗り込んで来たら、ひとたまりもないわ」
「ばかだな。知っているといっても、それは想像にすぎないんだ。なるほど明智の想像力は怖いほどだが、あくまで想像にすぎない。だからこそ、あんな手品なんかで、僕らに神経戦を仕掛けているんだ。ここでへこたれたら、先方の思う壺じゃないか。おれは明智と会うよ。会って堂々と智恵比べをやって見るんだ。蔭にいるから、変に恐ろしく感じるけれど、面と向かったら、あいつだって人間だ。おれは決して尻尾をつかまれるような、へまはしない」
少し話がとだえたとき、あけみが突然妙な目つきになった。
「あなた、怖くない? あたし、その辺に何だかいるような気がする。いつかの晩も、廊下のくらがりに、幽霊が隠れているような気がした。それとおんなじ気持よ」
「また変なことを云い出した。君のヒステリーだよ」
しかし、克彦は、いきなり立って、書斎からウィスキー瓶とグラスを持って来た。そして、またグイグイとあおった。
「あなた、どうしてあの晩、股野ととっ組みあいなんかしたの? どうして頸なんかしめたの? どうして殺してしまったの。