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つきよとめがね

月夜と眼鏡

小川 未明

「赤い鳥」赤い鳥社、1922(大正11)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,679 字 · 8 页

青空文庫

「さっきの眼鏡はどこへいった。」と、おばあさんは、たなの上を探しました。眼鏡は、目ざまし時計のそばにあったので、さっそく、それをかけて、よく少女の傷口を、見てやろうと思いました。

おばあさんは、眼鏡をかけて、この美しい、たびたび自分の家の前を通ったという娘の顔を、よく見ようとしました。すると、おばあさんはたまげてしまいました。それは、娘ではなくて、きれいな一つのこちょうでありました。おばあさんは、こんな穏やかな月夜の晩には、よくこちょうが人間に化けて、夜おそくまで起きている家を、たずねることがあるものだという話を思い出しました。そのこちょうは足を傷めていたのです。

「いい子だから、こちらへおいで。」と、おばあさんはやさしくいいました。そして、おばあさんは先に立って、戸口から出て裏の花園の方へとまわりました。少女は黙って、おばあさんの後についてゆきました。

花園には、いろいろの花が、いまを盛りと咲いていました。昼間は、そこに、ちょうや、みつばちが集まっていて、にぎやかでありましたけれど、いまは、葉蔭で楽しい夢を見ながら休んでいるとみえて、まったく静かでした。