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つきみそう
月見草
山之口 貘
「四国新聞」四国新聞社、1954(昭和29)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,095 字 · 2 页
だ。それどころか、はなはだ残酷なことをしないでいられなくなったりして、むきになってしまって、虫達の生命をどれほど奪い去ったかも知れないのである。
しかしながら、月見草からは、いつもベンタツされて来た。前には月見草といえばセンチメンタルな花だとおもっていた。夕方になると、月見草はそのからだをふるわせながら、黄の花をひらくのだが、夜なかになっても、ぼくの仕事がはかどらず、四苦八苦の揚句、ペンをおいて一服しているときなど、ふと庭に眼をやると、月見草はまったく素晴らしいのだ。夜になって眼を覚して、さかんに生きているとでもいいたいながめで、ぼくなどもおなじ仲間みたいに親し味を感じ、勇気づけられるのである。
仲間といえば、縁の下にもいるのである。大きなガマなのだ。縁側に出て、外の空気を吸っていると、ガマがおもい出しては歩きおもい出しては歩きしているのを見かけるのだ。そんなときかならずぼくは、カナブンを捕って、それをガマに投げあたえる。ガマはしかし、用心深いみたいに、すぐには食わないのだ。一足ずつ静かに近寄って、適当な距離に来ると、じっとカナブンを見守っているのだが、死んだものは食えぬとでもいうのか、カナブンが身動きするのを見届けてはじめて、ぺろっと食ってしまうのだ。