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ありしまたけおのしによせて
有島武郎の死によせて
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,052 字 · 7 页
彼には、実に多くの、美しい、センチメンタリティー、甘さがあった。自分のような女性、若者にもなお且、その柔さで物足りなさを覚えさせるほどの。而も、彼には、人間として精進し、十善に達したい意慾が、真心から熱烈にあった。
作品にその二つが調和して現れた場合、ひとは、ムシャ氏の頼もしさとは又違う種類の共鳴、鼓舞、人生のよりよき半面への渇仰を抱かせられたのだ。
彼は、学識と伝統的なセルフレストレーンの力で、先ずハートに感じるものを、頭の力で整理したと云う人であった。人情によって理解し、直覚し得たところを、理想に燃える知で文学にした。情と知とを二分別し得るものとすれば、彼は第一に情の人で、それを粗野に取扱われなかった情そのもののデリカシーと、後天的の品とがあったのだ。
「此点は、私に性格の或類似からよくわかる。私の感情は、彼より単純で、粗朴で、同時に盲目な生命の力に支配されずに居ない強烈さを持って居る。従って、彼より憎らしい女になる時がある代り、その強さが素直に出た時、私が辛じて、天に達する階子のありかを知ることの出来る足場となるのだ。」
「或女」以後、私は、彼の作品が、或行き詰りを持ち始めたことを知った。