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ありしまたけおのしによせて
有島武郎の死によせて
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,052 字 · 7 页
読んで見ると、精神の充実したフルーエントなところがなく修辞的でありすぎ、いつまでも青年の感傷に沈湎して居るような歯痒さがあった。「星座」にも同じ失敗を認める。大づかみに、ぐんと人生を掴まず視点が揺れ、作家としての心が弱すぎた。為に、あれ丈文化的価値を裏に持った素材が、明かにこなされ切れなかった。
時に、彼の精神の或面に、私が、物足りなさによる侮蔑に近いものを感じたのは争われない。何か、この先もう一つ、吹っきれば素晴らしいのが見えて居るのに、いさぎよくそこまで踏切ってなぜ呉れないか、と云う愛の変形であったのだ。
何かで「忘れ得ぬ人々」? と云う題で書かれた感想に類したものを見て自分の感じたことも同じだ。
最近、彼が、もう一年近い沈黙の間にどう旧套を脱されるかと云うことが、自分にとって一つの大きな、楽しい期待であったのである。
ところが、彼は、そこを踏み切るにああ云う道に出られた。
男の四十六歳はあれ程危険な年齢か。
彼の青年時代から引続いた精神的緊張の疲労が、深い休安、慰撫を求めて居た時、ああ云う消極的の愛が、あれ程積極の力を出して、彼に働きかけたのか。