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あさおきのひとたち

朝起の人達

佐々木 邦

「面白倶楽部」1925(大正14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,511 字 · 14 页

青空文庫

と先生は何か他のことを考えながら相槌を打って、

「一つ拝見致しましょう。熱はないでしょうね?」

と来る。熱のないことは先刻から言っているのである。

「熱はないですが、何うもハッキリしません。仕事が兎角億劫です。会社なぞと違って、役所は劇務ですからな」

と私は要領を繰り返して同情を求める。

「それは何人にしても仕事は楽じゃないですよ。私なぞは日曜も祭日もありません。夜分は能く眠れますか?」

「能く眠れます。昼間働くから疲れるのでしょうな」

「疲れても、眠られるから宜いのです。心臓が少し早いですね?」

「大変早いです。一ヵ月ばかり役所を休んで静養する必要はありますまいか?」

「何あに、大したことはありませんよ。まあ/\朝早く起きて運動をするんですな」

と原崎さんの診断はいつも定っている。薬も碌にくれない。昵懇の間柄だから、贔負目があるので兎角軽く見る。

ところが今回は私の主張が通って、医者は神経衰弱ということに同意してくれた。

「診断書は一月にしましょうか? 二月にしましょうか?」

「これからは季節が好いですから二月に願いましょう」

と私は重く見ている。

「二月あれば充分でしょう」