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きにのぼったこども

木に上った子供

小川 未明

「少年倶楽部」1927(昭和2)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,835 字 · 8 页

青空文庫

そして、先刻から自分も、やはりこの木の頂のところまで、空が低く下りてきているような気がしてしかたがなかったのです。

「お母さんが、降りてきてくだすったのじゃないかしらん。」と、心で思っていました。

まだ、二人の子供は、けんかをつづけていました。

「けんかをしなくたって、いいじゃないか。だれか、木に上ってみればわかるだろう。」と、大きな子供がいいました。

しかし、だれも、この高い木の頂のところまで、上っていくというものはなかったのです。

「僕が、上っていこう。」と、辰吉はいいました。

すると、みんなが、びっくりしたように、辰吉の顔をながめました。

「君が上っていく?」

「高いぜ、おっこちたって知らないぜ!」

「君は、ほんとうに上れるかい。」と、みんなは、辰吉を見て口々にいいました。

辰吉は、独り、黙ってうなずきました。そして、小さなげたを木の根もとに脱ぎ捨てて、木に上りはじめました。

みんなは、驚いた顔をして、上を見ていました。あたりは、すでに暗くなって、木の枝が、風に吹かれているばかりであります。そして、星の光が、すぐ木の頂のところに光っているように、夜の空に美しく輝いていました。