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きそおんたけのはなし

木曾御岳の話

木暮 理太郎

「日本山岳会会報」1933(昭和8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,366 字 · 15 页

青空文庫

今日は懐古の夕だそうですから思いきり古い話をすることにしますが、私の古い山旅はただぶらぶら歩いていたのみで日記さえもつけない、ですから忘れてしまった方が多いのは残念ですが、しかし何といっても、見て面白いし、登って面白いし、読んで面白く、聞いても考えても亦おもしろい山のことですから、随分古い思い出はあります。そのうちで一番よく頭に残っているのは、初めて木曾の御岳へ登った時のことです。その話はいつか前にもしたことがあったかと思いますけれども、また一つ今夜お話して見たいと思います。

なにしろその頃は中央線の汽車がまだ八王子までしか通じていないし、碓氷トンネルがやっと出来て汽車が通じて間もない明治二十六年、丁度私が二十でございました。何故御岳へ行ったかといいますと、その頃私の家は御岳講に入っていましたからその講中の者が参詣するというのでそれについて行ったわけです。しかし講中と同じ行をすることは御免を蒙りました。あれは毎日水ばかり浴びているのですから、もっとも夏のことですから別に苦にもならないでしょう。朝起きると水を浴びる。夕方宿に着くと早速また水を浴びる。