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こがらしのさかぐらから

木枯の酒倉から

坂口 安吾

聖なる酔っ払いは神々の魔手に誘惑された話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,163 字 · 22 页

青空文庫

と、ね。

まことに木枯と酒と俺は因果な三角関係を持つものである――木枯は、恰も俺の活力を刺し殺すように酒倉のペンペン草を枯してしまうのだ。すると俺は――

ああ! 俺は冬が大嫌いだあ!

冬は――俺の心をさむざむと白く冷くするのじゃよ。寒気は俺の脳味噌をも氷らせるのだ。俺の一切の運転はハタと休止して――俺はペンペン草と一緒に、ここに果敢なく枯れ果ててしまうのだ。顔色はいうまでもなく蒼白となり、目は鈍くかがやき、脳味噌は――脳味噌という代物を余はひどく怖れるよ――脳味噌は、氷りついて動かないのだ。そこで俺は様々な手段を講じてぜひとも脳味噌を動かそうと勉めるのだ。俺の目はいみじくも光り輝き、額は痩せくたびれて、頭は唸りを生じ、俺は――ほがらかに気狂いになりそうな気がするのだ。俺の唇は酒を一滴も呑まぬのに呂律も廻らなくなって、ワハ、オモチロイヨ、などと言うのだ。こんな風にして、俺の身体は何かガラスのような脆い物質から出来ていて、どこかしら一寸でも動かしたが最後ピチピチと音がしてわれちまうような気になる。舌を出してさえゼンマイがくずれそうな気がするから(ああ、舌が出してみたいねえ)笑いたくてたまらないのだが――俺は断じて笑わんよ。