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みぼうじん
未亡人
豊島 与志雄
「諷刺文学」1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页
」
書生と女中はお辞儀をするように頷きましたね。まったく、家庭の秩序とは、大出来でしたよ。
然しそのようなことには、信昭君なんかは無関心のようでした。若い科学者たる彼は、あなたの立候補を揶揄的な眼でしか見ていませんでしたよ。
「それもまあ、お母さんの道楽としてはいいかも知れませんね。この頃、あまり面白いことがありませんから……。」
あなたは大袈裟に怒ったような様子をしましたね。
「また、なにを言うんですか。あなたはいつも政治を軽蔑しますが、現に、政治の中に生きていない人が一人だってあるでしょうか。」
「僕は政治の外に生きたいですね。現在のような政治ならですよ。」
そしてあなたたちは、政治の中に生きるとか、政治の外に生きるとか、そんなことを論じあいましたね。それも親子の愛情を持って、冗談まじりに、そして信昭君の方からいい加減に調子を合せて、謂わば酒の肴にしたのでしょうか。
そして沈黙の合間に、あなたは、冷たい微風に似た寂寥を感じましたね。この点については、私はあなたを尊敬しますよ。
守山未亡人千賀子さん
翌朝、あなたは珍らしく寝坊しましたね。前夜、ウイスキーの酔いが頭にのぼり、またいろいろな雑念が頭にのぼって、なかなか眠れなかった故でしょう。