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みきかんのともに

未帰還の友に

太宰 治

「潮流」1946(昭和21)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,241 字 · 21 页

青空文庫

」と言って立ち上り、「まるで気違いだ。」

さすがに僕もむっとして、奥へ引き上げて行くおじさんのうしろ姿に向い、

「君は、ひとの親切がわからん人だね。酒なんか飲みたかねえよ。ばかものめ。」と言った。まさに、めちゃ苦茶である。これで僕たちの、れいの悪計も台無しになったというわけであった。

僕は、その夜、僕の家へ遊びにやって来た君たちに向って、われらの密計ことごとく破れ果てた事を報告し、謝罪した。けだし、僕たちの策戦たるや、かの吉良邸の絵図面を盗まんとして四十七士中の第一の美男たる岡野金右衛門が、色仕掛の苦肉の策を用いて成功したという故智にならい、美男と自称する君にその岡野の役を押しつけ、かの菊屋一家を迷わせて、そのドサクサにまぎれ、大いに菊屋の酒を飲もうという悪い量見から出たところのものであったが、首領の大石が、ヘマを演じてかの現実主義者のおじさんのために木っ葉みじんの目に遭ったというわけであった。

「だめだなあ、先生は。」と君はさかんに僕を軽蔑する。「先生はとにかく、それでは僕の面目までまるつぶれだ。何の見るべきところも無い。」

「やけ酒でも飲むか。」と僕は立ち上る。