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みかいなふうけい

未開な風景

宮本 百合子

「婦人公論」1927(昭和2)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,478 字 · 16 页

青空文庫

その奥に池があった。池は凄く、みのえ一人で近よれない。みのえはだらだらと下った草原の斜面に腰を卸した。

百舌鳥が鳴いていた。空にある白い雲が近くに感じられた。みのえの体のまわりにある草の中に、黒い実のついたのがあった。葉っぱが紅くなったのもある。一匹のテントウ虫が地面から這い上って、青い細い草をのぼった。自分の体の重みで葉っぱを揺ら揺らさせ、どっちへ行こうかと迷っているようであった。地面の湿っぽい香と秋日和の草の匂いとが混ってある。

みのえは、涙を落しそうな心持で、然し泣かずそこに足をなげ出して虫や草を眺めていた。少し病気になったようにみのえは奇妙な心持であった。母親も油井もいやで、がっかりして、風も身に沁みる、空の高さも、そこに飛び交う蜻蛉も身に沁みる。魂が空気の中にむきだしになっていた。

長い時間が経った。

みのえは、背後で荒っぽく草を歩みしだく跫音を聞いた。みのえは自分の場所からその方を見たら、一人の十六七の小僧が立って放尿していた。白いシャツに腹がけをしめ、何故か脚の方はすっかり裸であった。

みのえは直ぐ正面を向いた。

小僧は草をこいで段々みのえの傍に来た。