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みかいのはな
未開の花
宮本 百合子
「婦人公論」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,052 字 · 6 页
家中寝鎮まったものと思って足音を忍ばせ、そーッと階下へおりて行ったら、茶の間に灯がついていて、そこに従弟が一人中腰で茶を飲んでいた。どうしたの今時分まで、というと、鼠退治さ。栗のいがってどこにあるんだい。さア、私も知らないけど。そう答える私は元禄袖のどてら姿、従弟はその辺にあった膝掛けを洋服の上から羽織った恰好で、お茶を注ぎ、寝ようよ寝ようよと云いながらつい話が弾んで明方近くになってしまった。
若いサラリーマンである従弟の話の中に、この頃の若い女のひとで結婚はしたくないが子供だけは欲しいって云うのが随分あるねということがあった。或る気質の女のひとが男などと話しているときの一つの姿態としてそういう表現でものを云うようなことも少なくはないであろう。女のそういう時の本当の心持、うその心持の綯い交る状態を寧ろ面白く思ってきいたのであった。
そのことはそれきり忘れていて、先晩、ある会で婦人の評論家にあった。中心の話題は文学のことであったが、偶然向い合わせに坐ったそのひとは、ねえ、あなたはどう思いますと、若い女のひとの中に結婚はいやだが子供は欲しいと云う人があることについて話すのであった。