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すえっこ
末っ子
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页
「話さなかったかな」と平五は首をかしげた、「姉さんに話しませんでしたかね」
「あたしは聞きませんよ」とくにが云った。
「米良さんは」と平五が急に問いかけた、「私が養子の縁談をどうして断わるかわかりますか」
平左衛門はゆっくりと頭を振った。
「つまり」と平五が云った、「つまり養子にゆきたくないからです」
「それはそうだろう」
くにがふきだした。
「そうじゃないんですよ、いや、ゆきたくないという気持には理由があるんです」と平五は云い直した、「新庄の叔父、木下へいった杢さん、ほかに友達で二人いますが、みんなそれは哀れなものですよ」
平五は養子の哀れさを並べた。細を穿つといったような詳しさで、米良夫妻はいささかおどろいたようであった。
「なるほどね」と米良が云った、「正月のときに杢さんをやりこめていたが、ふーん、なるほど切実な問題なんだな」
「依田さんはそんなことはないわ」とくには反対した、「新庄さんや木下さんや、ほかの方たちのことは知らないけれど、依田さんに限ってそんなことはありませんよ」
依田というのは、米良夫妻がすすめた婿養子のくちで、いちど平五は会ったことがある。