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すえっこ
末っ子
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页
らしい、ほかの者にはしないのである、私の顔を見るとべろを出すので、いいこころもちはしなかった、こんなことは誰に話すわけにもいかない、妻にさえ話したことはないが、その当時の侮辱されたような気持はいまだに忘れることができないのである、その後ずっとあいつのすることを見てきたが、すべてがうわっ調子で、侍の子らしくない、七千二百石の旗本の子であるという自覚がない、誰も知らないだろうが、たとえば饅頭のこと、古足袋や古肌着のこと、また道具屋のことなど、私はみんな知っているのである、じつに、なんと云いようもない、三河以来の由緒ある家柄を考え合せると、なんともなさけなくなるのである」
長兄の敬二郎が云う。
「あいつは末っ子のあまったれだ、末っ子は三文安いというが、祖父や祖母にあまやかされたのでおまけが付いてしまった、あのままでは養子のくちがあってもやれやしない、困ったやつだ」
母親のいつ女は云う。
「あたしにはあの子の気持がわかりません、あれは気ごころの知れない子です、末っ子だからあまやかしてはいけないと思って、できるだけ気をつけて育てたつもりですけれどね、いいえ、乱暴でもないしだらしがないというんでもありません。