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すえっこ
末っ子
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页
洗いざらした単衣に古い帯をしめ、継ぎの当った足袋をはいている。狭い店の上り框へ、横坐りに腰を掛けているので、細いしなやかな腰の線がおどろくほど女らしいいろけをあらわしていた。膚は少し浅黒く、ひき緊っていて、眼と口が小さい。その小さな眼と口とに、平五は抵抗できないほど惹きつけられる。初めてその店で見かけたときからずっと、いつ会ってもその小さな眼と口つきとは、つよく深く彼をとらえるのであった。
なんとなくはいりそびれて、平五が通り過ぎようとすると、店の中から清兵衛が呼びかけた。
「小出さまどうなさいました、お寄りにならないんですか」
平五は立停り、それから不決断に店へはいっていった。娘はさっと腰をあげ、伏眼になって会釈しながら、脇へよけた。
「どうぞ」と平五は会釈を返した、「どうぞ用を済ませて下さい、私は通りがかりに寄っただけですから」
「有難うございます」と娘は答えた、低くて細い声だが、はっきりしていた、「わたくしもいま用が済んだところでございますの、どうぞ」
掛けてくれというような身ぶりをした。清兵衛は銭箱をあけ、なにがしかを紙の上へ取り出していた。
「きびしい残暑ですね」