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すえっこ

末っ子

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页

青空文庫

九

いつもならそんな浪費はしないのだが、辻駕籠をひろい、駄賃をはずんでいそがせた。――平河町には多賀勘右衛門がいた。平五は森家の者には会わず、家扶を玄関へ呼んでもらって、じかに多賀と会いたい旨を述べた。家扶はいちど奥へゆき、すぐに戻って来て、彼を庭のほうから数寄屋へ案内した。

九

勘右衛門は四十二三になる肥えた男で、顔も躯つきも逞しく、するどい眼をしていたが、京訛りの言葉が女性的なので、印象がひどくちぐはぐに感じられた。話は簡単に済み、平五は短刀を受取って帰った。

勘右衛門はまだ研いではいなかったが、正宗に相違ないと云い、その理由を説明した。平五も正直に事情を話し、もし正宗の作だとすれば代価はどれくらいかと訊いた。勘右衛門は自分が折紙を付ければ金八十五枚だと答えた。焼身でなければ金百五十枚以下ではないが、焼直してあるからそのくらいだろうと答えた。そこで平五は、元の持主に割戻しをするとすれば、金額はどのくらいだろうかと訊いた。勘右衛門は笑って、その必要はあるまいが、もし気が済まないのなら、二十金も遣ったらよかろうと答え、「しかしこれは木挽町が譲り受けることになっている筈ですよ」