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さっぽろまで
札幌まで
寺田 寅彦
「鉄塔」1932(昭和7年)11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,545 字 · 14 页
昔のこれらの都市の面積と今の東京の面積との比が昔の日本の人口と今の人口との比に近いものを与えはしないかという想像が起る。
雨上りのせいもあろうが、樹木の緑の色がいかにも落着いた、重厚な、しかも美しい暗緑色をしている。低くてなだらかな山々が広く長く根を張っている姿も、やはりいかにも落着いたのんびりした感じを与える。それでいて山水遠近の配置が決して単調でなく、大様で少しもせせこましくない変化を豊富に示している。
岩手山は予期以上に立派な愉快な火山である。四辺の温和な山川の中に神代の巨人のごとく伝説の英雄のごとく立ちはだかっている。富士が女性ならばこれは男性である。苦味もあれば渋味もある。誠に天晴な大和男児の姿である。この美しい姿を眺めながら妙な夢のような事を考えてみるのであった。
誰かも云ったように、砂漠と苦海の外には何もない荒涼落莫たるユダヤの地から必然的に一神教が生れた。しかし山川の美に富む西欧諸国に入り込んだ基督教は、表面は一神でありながら内実はいつの間にか多神教に変化した。同時にユダヤ人の後裔にとっての一つの神なるエホバは自ずから姿を変えて、やがてドルになりマルクになった。