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さっぽろまで
札幌まで
寺田 寅彦
「鉄塔」1932(昭和7年)11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,545 字 · 14 页
それからまた、どこの国でも婆さんは同じような婆さんである。婆さんはユニヴァーサルに国境を超越した存在だと思う。婆さんに人種はないのである。
北へ行くほど人間の少なくなるのを感じる。たまたま停まる停車場に下りる人もなければ乗る人もない。低い綿雲が垂れ下がって乙供からは小雨が淋しくふり出した。野辺地の浜に近い灌木の茂った斜面の上空に鳶が群れ飛んでいた。近年東京ではさっぱり鳶というものを見たことがなかったので異常に珍しくなつかしくも思われた。のみならず鳶のこのように群れているということ自身も珍しい。おそらく下には何かよほど豊富な獲物があるに相違ないが、それは何だか分らない。しかし、よもや心中でもあるまい。
青森湾沿岸の家の屋根の様式は日本海海岸式で、コケラ葺の上に石塊を並べてあるのが多い。汽車から見た青森市の家はほとんど皆トタン葺またはコケラ葺の板壁である。いかにも軽そうで強風に吹飛ばされそうな感じがする。永久性と落着きのないのは、この辺の天然の反対である。浅虫温泉は車窓から見ただけで卒業することにした。
夕方連絡船に乗る。三千四百トン余のタービン船で、なかなか綺麗で堂々としている。