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むらいちょうあんないれのからかさ

村井長庵記名の傘

国枝 史郎

「ポケット」1925(大正14)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,794 字 · 16 页

青空文庫

「それは真面目のご貴殿のこと、他人に怨みを買うような、よくないご所業をなさるはずはない。とは云え浮世は金が仇、金のためには義理ある弟さえ、殺そうとする悪党もある。私から見れば間瀬とか云う男、食わせ者の銀流し、太い野郎に思われますなあ」

自分がこれから遂げようとする、極悪非道の所業に引っ掛け、長庵はこんなことを云ったものである。

追って行く人追われる人

それに、長庵の眼からみれば、このセチ辛い世の中に、他人の罪を身に引き受け、浪人したという事が、変に不自然にも思われるのであった。

「どうでも俺とは歯が合わねえ」

こう長庵は思うのであった。

「義侠心と云えばそうも云えるが、つまりそいつは宋讓の仁で、一つ間違うと物笑いの種だ。いやもう物笑いになっている。襤褸を下げて病みほほけ、長庵ずれの施療患者に、成り下るとは恥さらし。それに反して利口なは、間瀬金三郎とか云う男、泣き付いて拝み倒し、自分の科を他人になすり、うまうま罪科を脱れたとは、正に当世でこちらの畑。出世をしているに違えねえ」

「もしえ」と長庵はニヤニヤしながら、

「間瀬とか云うその仁、その後お豆でございますかね」