轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

とうきょうへちかづくいちじかん

東京へ近づく一時間

宮本 百合子

「文学評論」1935(昭和10)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,889 字 · 6 页

青空文庫

去年行った衆はたいがいもう三十越したったが……、私もこんど募集があったら行こうかと思っているが、どうも――子持ちだからねえ」

ネクタイをずらしたようにかけて、脱いだゴム長は坐席の下にたぐめたまま、此方を向いて紺足袋の片膝抱え、おとなしい口調で云っている。話対手の顔は見えず、学生帽のような形をしたカーキ色の帽子や同じ色の外套の裾などが見えるばかりだ。一寸見ると青年団員か何かかと思われるカーキ色ずくめのその若い男は、汽車が古河という小さい駅に停った時、どうしたわけかグズグズに繩のゆるんだ白布張りの行李を自分でかついで乗り込んで来た。そして、場席はほかのところにいくらも空いているのに、子供連れの男と向い合って腰をおろしたのである。

「満鉄も建設の方だといくらもありますが、……傭員ですからね」

「本社員になれないんですか?」

「建設の方はまた別で」

声が車輪の音の間に途切れて分らない。私は、六つばかりの赤いジャケツを着た女の子をつれた男が、本気な好奇心を動かされた表情でいろいろと満鉄のことを訊きたがっている様子に、注意をひかれた。水道局か何かに勤め、目下のところ月給はとっているが、決して現在の境遇に安心してはいられない。