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とうきょうようさい
東京要塞
海野 十三
「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页
非常警戒
凍りつくような空っ風が、鋪道の上をひゅーんというような唸り声をあげて滑ってゆく。もう夜はいたく更けていた。遠くに中華そばやの流してゆく笛の音が聞える。
丁度そのころ、築地本願寺裏から明石町にかけて、厳重な非常警戒網が布かれた。
しかし制服の警官はたった二人だけ、あとはみな私服の刑事ばかりが十四、五人。寝鎮った家の軒端や、締め忘れた露次に身をひそめて、掘割ぞいの鋪道に注意力をあつめていた。
一体なにごとが始まるのだろうか。
「おい、来たぞ」
「来たか。通行人はどうだろう」
「あっ、向うの屋上から青灯をたてに振っている。幸い通行人は一人もないというのだ」
「うむ、うまくいったな」
警官たちの顔つきは、緊張そのものであった。
誰がやって来たというのだろうか。
本願寺裏の掘割ぞいの鋪道の方へ、ふらふらと千鳥足の酔漢がとびこんで来た。
「うーい、いい気持だ。な、なにもいうことはねえや。天下泰平とおいでなすったね」
取りとめもない独白のあとは、鼻にかかる何やら音頭の歌い放し。
すると、その後からまた一人の男が、同じこの横丁にとびこんできた。
前の千鳥足の酔漢は、小ざっぱりしたもじり外套を羽織った粋な風体だが、後から出てきたのは、よれよれの半纏をひっかけた見窶しい身なりをしている。