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ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ
東山時代における一縉紳の生活
原 勝郎
「藝文」京都大学文学部、1917(大正6)年8月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,142 字 · 134 页
二段の結論ではなくむしろ序論の性質を帯びたものである。これを第一段として先ず説くのは、第二段において叙せらるべき一縉紳の生活の背景を画かんがためである。しかして第二段においてなすべき叙述をば、たんにこれをして如上の背景を利用せしむるのみでなく、第一段の概括的評論と相反映し、少なくもその一部分だけでも立証させたいものだと思う。読者あるいはこの論文をもって帰納によらざる空論なりとし、あるいは帰納と見せかけた演繹論だと評するかも知れぬが、予はひたすらに帰納をくりかえすことをもって史家の任務の第一義だとは考えておらぬのであるから、かかる批評はあまり苦にならぬ。手品だと評せられるならば、それでも甘受しよう。ただ恐るるところは拙い手品の不成功に終りそうであることのみである。先ず第一段から始めよう。因に述べておくが予はかつて『芸文』第三年第十一号に、「足利時代を論ず」と題する一篇を掲げたことがある。東山時代は足利時代の中軸であるからして、本篇とそれと、大体の帰趣において重複を免れない。しかしながらかつて論じたのは東山時代を主として睨んだ足利時代の総論で、本篇は足利時代を東山時代に総括しての論である。