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ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ

東山時代における一縉紳の生活

原 勝郎

「藝文」京都大学文学部、1917(大正6)年8月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,142 字 · 134 页

青空文庫

なおその上に足利時代の方がかえりてそれ以前の時代よりも、群盗横行の害少なかったろうと思われる他の理由もある。群雄の割拠がすなわちそれである。

群雄割拠の中央集権を妨げたのは、もとより極めて明白なことで、何人といえどもこれを否むものはあるまい。しかしながら藤原時代以前、すなわち群雄割拠のなかったと見なされる時代に、はたして、どれだけの中央集権の実があったろうか。中央政府の勢力が広く波及したようでも、その把握力が極めて脆弱なものでなかったろうか、中枢がただ一つであったということは、必ずしもその中枢の集中力の強大を意味するものではない。のみならず悲観論者は、群雄割拠になると、その群雄の各々の領内には数多の群盗が横行して、その秩序はいやが上に乱脈になると想像するらしいが、これが果して肯綮にあたった想像であろうか。もしこの想像が正鵠を得るものとすれば、ローマ帝国時代よりも、近世国家の樹立以後における欧洲の秩序が、一層紊乱しておらなければならぬ。はたしてそうであろうか。余の意見はこれと反対だ。群雄は国を盗む梟師である。鈎を盗む小賊が到る処に出没するよりも、彼らの若干を制馭する有力者すなわち群雄が現われて、割拠の形勢を成すということは、まさにより大なる統一を致さんとする前において、先ず小なる数個の統一をなすものであっ