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ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ
東山時代における一縉紳の生活
原 勝郎
「藝文」京都大学文学部、1917(大正6)年8月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,142 字 · 134 页
て、換言すれば集中作用の大いに発動しかける端緒である。余は群雄の崛起をもってむしろ小盗の屏息を促すものだと考える。かく考えきたれば応仁以後の群雄割拠時代が、必ずしも藤原時代より無秩序で交通の危険が多かったと断言することがむつかしくなるではないか。
藤原時代と比較することをば、先ずこのくらいにしておこうが、次には足利時代に時代相当の交通の不便と危険とを認めた上に、さてそれらの不便や危険等が相当の人々からいかに感受されたか、換言すればこれらの故障がいかなる程度まで交通を阻碍したかを論じてみよう。それについて第一に弁じなければならぬのは当時のいわゆる乱世なる状態が、いくばくの不安の念を起こさしめたかについてである。たんに不安といえば、大疾患もその一であるけれど、蚤の食うのもまた不安である。安逸と奉養とに事欠かぬ今日の人は、些細なる市井の出来事にも驚いて、はなはだしく不安を感じやすいのであるけれどもこの感じ方は、現今においてすら国によりて差等あるごとくに、同一国においては時代による差等があるに相違ない。予といえども、足利時代をもって人々が大いに楽観した時代だとは考えておらぬけれど、さりとて余は徳川時代の歴史家、およびその説を踏襲する今日の一部歴史家の考うるごとくに、足利時代殊に応仁以後において、都鄙の人心が戦乱