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ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ
東山時代における一縉紳の生活
原 勝郎
「藝文」京都大学文学部、1917(大正6)年8月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,142 字 · 134 页
大病人を逐い出すのは当時一般に行なわれたことで、三条家の知合なる某亜相のごときは、十一年間も妾同様にしておった女を、やはり大病になると近所の道場まで舁き出させたことがある。されば実隆が二人の女中を死際に門外に出したとて、決して残酷な所為とはいい難い。この二人のほかに女中に関することは、総領娘保子の乳母にて雇った女が、男を拵えて逃亡を企てたところ、一旦は尋ね出された、しかし遂にはその男と奥州に下向したとの記事あるのみである。しかしながら女中はこの三人と限ったわけではなく、駈落した右の乳母の後任も入れたろうし、男の子のために別に雇われた乳母もあったかも知れぬ。また老官女や梅枝のかわりも出来たかも知れない。
三条西家の男子の召仕には、雑掌すなわち家令のような役をしておった元盛という者がある。これは通勤の役人であって、時としては主人の一家を私宅に招待し宴を催すこともあったが、文明十九年三月末に賜暇を得て越前の国へ下向し、間もなくその地において病歿した。この者は青侍中特別の者であったからして年回には相当の合力をしてやったのである。この元盛が老年になってからわざわざ越前に赴き、そのまま歿したところを見ると、越前に在った三条西家の所領の出身なのであったろう。