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まつばやしへんや
松林蝙也
山本 周五郎
「キング」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,092 字 · 25 页
六
ようだなどと曖昧なことを申すな、――長くてどんな色をしている」
「その、少しばかり光っております」
頑太郎汗だくである、蝙也は堪らず失笑しながら、傍にあった抜身を取出して、
「強情者、長くて光ってちょいとした物というのはこれだろう」
「あ、どうしてこれを!」
「今頃になって慌てるな、そのほうが背中へ突掛ったとき俺が抜取っておいたのだ」
「――参った!」
昨夜からの参ったを持越してしまった。――蝙也が笑って起とうとした時、若侍があわただしくやって来て、
「城中から急の御使者でございます」
と告げた。――城から急使とはかつてないことである。ただちに支度を改めて客間へ行ってみると、かねて昵懇の目附役伊達主水であった。
「お稽古中お騒がせ申して――」
「いやその御斟酌には及びませぬ、急の御使と承わりましたが何か出来致しましたか」
「実は是非とも御出馬を願いたいので」
と伊達主水は膝を進めた。
六
主水の話をかい摘んで記すと――。
南部藩の士で椙原武太夫という剣道の達者がいた。この男が南部家の重臣の娘を騙して出奔し、仙台に誰か手引きする者があって、いま国分町の旅籠宿に隠れているところを追手の者が発見した。