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くだもののてんごく

果物の天国

中谷 宇吉郎

「西日本新聞」1955(昭和30)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,077 字 · 3 页

青空文庫

といって、売っていたものである。柿はドイツ語でもカキである。

アメリカにはパーシモンというものがあって、これは辞書では柿となっているが、まことにつまらないもので、大きさも味も、まるで別物である。まず日本の野生の小さな柿と思えば間違いない代物である。この頃加州の日本人が、日本種の柿を栽培しているので、シカゴなどへも本物の柿が来ているが、これはひどく高くて、われわれの口にははいらない。

蜜柑なども、お正月に食べるごく普通のあの蜜柑が、アメリカでは、相当の貴重品である。オレンジとそれに類似のもの、すなわち柑橘類は沢山あるが、日本の蜜柑のようなものはあまり見当らない。

それで蜜柑の罐詰が、相当量アメリカへ輸出されていて、これは非常に喜ばれている。だいたい食後に、アイスクリームをかけて出すのであるが、かなり値段が高いので、半贅沢品である。パーティの時に出すくらいのもので、一般の家庭ではふだんは一寸食べられない。

こういうふうに考えてみると、日本はまことに果物の天国である。地味もよいのであろうが、一番の原因は、秋が永いという点にあるのではないかと思われる。加州のように、年中合服一着ですむところでも、シカゴのように、夏からすぐ冬になるところでも、ともに日本のような高級な果物は出来そうに思われない。