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かれおばな

枯尾花

関根 黙庵

「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,502 字 · 11 页

青空文庫

のだ、この事檀家の告発に依り師の坊も捨置がたく、十分に訓誡して放逐しようと思っていると、当人の方でも予めその辺の消息を知り、放逐されると覚悟をすれば、何も畏れる事は無いと度胸を極め、或夜師の坊の寝息を考え、本堂の橡の下に隠してある、例の待網を取出して彼の小溝へ掛けたが、今夜は如何した訳か、雑魚一疋懸らない、万一や網でも損じてはいぬかと、調べてみたがそうでも無い、只管不思議に思って水面を見詰ていると、何やら大きな魚がドサリと網へ引掛った、その響は却々尋常で無った、坊主は〆たりと思い引上げようとすると、こは如何にその魚らしいものが一躍して岡へ飛上り、坊主の前をスルスルと歩いて通りぬけ、待網の後の方から水音高く、再び飛入って遂に逃げてしまった、大きさは約四尺も有う、真黒で頭の大きい何とも分らぬ怪物だ、流石の悪僧も目前にこんな奇しみを見て深く身の非を知りその夜住職を起してこの事を懺悔し、その後は打て変って品行を謹しみ、今は大坂の某寺の院主と為っているとの事だ。