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ざくろ
柘榴
山本 周五郎
「サン写真新聞」サン写真新聞社、1948(昭和23)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,342 字 · 25 页
二
昌蔵は熟れた柘榴の実を割って眺めていたが、ふと熱のある人のような眼で真沙をかえり見、割った果実の中の紅玉のような種子を示しながら、こんなことを云った。
「この美しい実をごらん。私にはこれがおまえのからだのようにみえるんだよ」
二
「割れた果皮の中から、白いあま皮に仕切られて、この澄んだ生なましい果粒が現われる。まるで乙女の純潔な血を啜ったような、この美しい紅さを眺めていると、私にはおまえの躯の中を見るような気持がしてくるんだ」
そのとき真沙は、本当に自分の躯を割って覗かれたような、恐怖に近い羞恥に襲われてぞっと身震いをした。云い表わしようのない嫌厭と屈辱のために、それから以後は昌蔵に見られるだけで、寒くなるような気持が続いた。――昌蔵は神経質になり苛々しだした。彼はどうかすると恐ろしく不機嫌になり、口もきかず、側へも寄らないことがある。居間からけたたましく呼びながら、急いでゆくと「もう済んだ、よし」などと突放すように云う。然しそれは決してながくは続かなかった。すぐにまた真沙をひき寄せ、詫びを云い、後悔しながら激しい愛撫を繰り返すのである。
「もう少しの辛抱だ。