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りゅうえいひろくかつえぐら
柳営秘録かつえ蔵
国枝 史郎
「国民新聞」1926(大正15)年1月5日~15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,933 字 · 27 页
「おおおお侍気を附けろよ! ただの水鉄砲たア鉄砲が異う。水一滴かかったが最後、手前の体は腐るんだからな」
闇に一条の白蛇を描き、シューッと水が迸り出た。
危険と知ったか侍は、サッと軒下に身を隠した。
「あっ、畜生、こいつア不可ねえ。あべこべに先方が水遁の術だ。……中止々々! 水鉄砲は中止。……さてこれからどうしたものだ。ともあれ家根から飛び下りるとしよう」
鬼小僧はヒラリと飛び下りた。
途端に侍が走り出た。
「小僧!」と掛けた血走った声、ザックリ肩先へ切り込んだ。
「どっこい!」という声と共に、辛く身を反せた鬼小僧、三間ばかり逃げ延びたが、そこでグルリと身を飜えし、ピューッと何か投げ付けた。それが地へ中った一刹那、ドーンと凄じい爆音がした。と、火花がキラキラと散り、煙りが濛々と立ち上った。
「へ、へ、へ、へ、どんなものだ。その煙りを嗅いだが最後、手前の鼻はもげっちまうぜ。気息を抑える発臭剤! 可哀そうだなあ、死れ死れ!」
だが侍は死らなかった。煙りを潜って走って来た。
「わッ、不可ねえ、追って来やがった!」
吾妻橋の方へ逃げかけた時、天運尽きたか鬼小僧は、石に躓いて転がった。