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りゅうえいひろくかつえぐら
柳営秘録かつえ蔵
国枝 史郎
「国民新聞」1926(大正15)年1月5日~15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,933 字 · 27 页
お杉は脇息にもたれたまま、さも美しく闇の中で死んだ。
それは力石三之丞が、鬼小僧と邂逅した同じ夜の、同じ時刻のことであった。
10
一方吾妻橋橋畔の、三之丞と鬼小僧とはどうしたろう?
三之丞は地の上へ坐っていた。
鬼小僧は上から覗き込んでいた。
と、突然三之丞が云った。
「小僧、俺は腹を切る。情けがあったら介錯しろ」
抜身をキリキリと袖で捲いた。
「おっと待ってくれお侍さん。一体どうしたというんですえ? 腹を切るにも及ぶめえ」
鬼小僧は周章て押し止めた。
「辻斬りしたのが悪かったと、懺悔なさるお意なら、頭を丸めて法衣を着、高野山へお上りなさいませ」
「懺悔と?」
侍は頬で笑った。
「懺悔するような俺ではない。俺は一心を貫くのだ! お杉様が今死んだ。その美しい死姿まで、俺にはハッキリ見えている。俺は後を追いかけるのだ」
グイと肌をくつろげた。左の脇腹へプッツリと、刀の先を突込んだ。キリキリキリと引き廻した。
「介錯」と血刀を前へ置いた。
気勢に誘われた鬼小僧、刀を握って飛び上った。
「苦しませるも気の毒だ。それじゃア介錯してやろう。ヤッ」と云った声の下に、侍の首は地に落ちた。