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かきのきのあるいえ

柿の木のある家

壺井 栄

「柿の木のある家」山の木書店、1949(昭和24)年4月20日<br>「海のたましひ」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年6月14日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 15,460 字 · 32 页

青空文庫

「わかったよ。シャッポだ。もうぜったいに赤ん坊をくれって、云わんからな。」

そういって、洋一の前に手をついておじぎをしたので、またも大笑いになりました。

それからあと、ほんとに三太郎おじさんは、新之助をくれと、ちっともいわなくなりました。しかし赤ん坊は、しんからかわいいらしく、畠の帰りなど、毎日のように立ちよって、いっとき赤ん坊の顔をみて帰りました。それは、フミエの時にも洋一の時にもそうしていたのですが、それを洋一たちはしらないものですから、ただ、新之助がほしさにそうしているのだと思うのでした。三太郎おばさんときたら、もっとかわいいらしく、毎日一度は、こないことがありません。古いゆかたをといておしめをつくってくれたり、赤ん坊の着物をぬってくれたりしました。なにしろ、一人分のおしめと、一人分の着物より、用意していなかったので、それをもらわなくてはまにあいません。それからまた、おかあさんのお乳がよく出るようにとて、手打ちうどんをつくってきたり、自分のうちにできた卵をそっくり持ってきてくれたり、いろいろ気をくばってくれました。その度に洋一は心配しましたが、時々は気の毒になり、よっぽど、一人だけ上げるといおうかな、と考え直すこともありました。