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かきいろのかみふうせん

柿色の紙風船

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页

青空文庫

私はスルリと電柱の蔭に隠れて、とうとうこの間抜け探偵をやりすごした。

私はすぐに円タクを雇うと、両国へ走らせた。国技館前で降りて、横丁を入ってゆくと、幸楽館という円宿ホテルがあった。私はそこの扉を押した。

三階へ上り、部屋からお手伝いさんを追い出すのももどかしかった。宿泊料とチップを受けとって、ふくら雀のようなお手伝いさんが出てゆくと、私は外套を脱ぎ、上衣を脱いだ。そして持ってきた包みをベリベリと剥がした。ナイフなんか使う遑がない。すべて爪の先で破った。

出て来た出て来た。

「柿色の紙風船だァ!」

外の紙風船は、室内にカーニヴァルの花吹雪のように散った。

「これだ、これだッ」

とうとう探しあてた柿色の紙風船だった。私の眼は感きわまって、俄かに曇った。その泪を襯衣の袖で横なぐりにこすりながら、私は紙風船の丸い尻あてのところを指先で探った。

「オヤ?」

どうしたのだろう。尻あてのところに確かに手に触れなければならない硬いものが、どうしても触れないのだ。そこはスケートリンクのように平坦だった。

「そんな筈はない!」

怺えきれなくなった私は、尻あてに指先をかけると、ベリベリと引っぺがした。