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かきいろのかみふうせん

柿色の紙風船

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页

青空文庫

皆さんは、二月二十日付の朝刊を見られたであろうと思う。その社会面の中で、なにが皆さんを最も駭かしたであろうか。

それは云うまでもあるまい。

「山麓の荒小屋に発見されたる怪屍体」という見出しで、「昨十九日午前八時、×大学生××は××山麓の荒れ小屋の中に於て休息せんとしたところ、図らずもその中に年齢四十二三歳と推定される男の素裸の怪屍体を発見した。警報をうけて警視庁の大江山捜査課長以下は、鑑識課員を伴って現場に急行した。現場には同人のものらしき和服と二重まわしが脱ぎ捨てられてあったが、その外に何のため使用したか長い麻縄が遺棄されてあった。其の他に持ちものはない。屍体は即日解剖に附せられたが、この男の死因は主として飢餓によるものと判明した。尚屍体の特徴として、左肋骨の下に、著しい潰瘍の存することを発見した。しかしその成因其他については未詳であるが、とにかく兇行に関係のある重大なる謎として係官の注意を集めている。

後報。――被害者の身許が判明した。彼は五十嵐庄吉(三九)であった。十日前に××刑務所を出獄した掏摸十二犯の悪漢である。彼は刑務所を出で、正門前に待ち合わせていた自動車に乗ったまま行方不明となったもので、同人の家族から××署へ捜索願が出ていたものである。