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かきいろのかみふうせん

柿色の紙風船

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页

青空文庫

なにしろ時価三万五千円のラジウムを肛門に挿んだ患者が行方不明になったというのである。患者のことは兎に角、ラジウムはどっかそこら辺の廊下にでも落ちていまいかというので、用務員は勿論、看護婦までが総出で探しまわった。

「無い……」

「どうも見つからん」

「困ったわねエ。でも探すものが、あまり小さすぎるのだわ」

そのうちに廊下に大きな掲示が貼り出された。「懸賞」と赤インキで二重丸をうった見出しで、「ラジウムを発見したる者には、金五百円也を呈上するものなり」と、墨痕あざやかに認めてあった。この掲示が出て騒ぎは一段と大きくなった。

だが結局、判らぬものは遂に判らなかった。五百円懸賞の偉力をもってしても、ラジウムは出て来なかった。なにしろ太さといえば鉛筆の芯ぐらいで、長さは僅か一センチほどというのであるから、廊下に落ちれば、風に吹きとばされるであろうし、便所の中に落ちてサアと流れ出せば、なおさら判らなくなるだろうし、ことに患者の体内に入ったままとすれば、患者がどこへ行ったかが判らなければ駄目だった。

病院の一室では、責任者たちの緊急会議が開かれた。結局原因は、ラジウムを盗むつもりでやって来たのだろうという説が有力だったが、婦長の如きは、患者が識らずに三十分以上もあのラジウムを肛門に入れて置くと、ラジウムのために肛門の辺が