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ねづよいほくりくぶんか

根強い北陸文化

中谷 宇吉郎

「北陸中日新聞」1960(昭和35)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,811 字 · 4 页

青空文庫

最近の十一月号の雑誌「自由」に杉森久英氏が「天才と狂人の間」という題で、島田清次郎のことを書いておられる。そのなかには清次郎の身辺のことばかりでなく、当時の北陸および金沢の文化的ふんいきがよく描写されているので、なつかしかった。

いまから考えてみると、当時の北陸にはたしかに、一つの地方文化があった。松任町の明達寺には暁烏敏がいて、親鸞思想普及の開拓者として多くの信者を集めていた。信者はこの地方に限らず全国から集まって来た。北陸の田舎の一小寺にこもって全国からの求道者をその膝下に集めるというのはあまり例のないことである。

文学の方では、室生犀星が、二十六、七歳の若さで、すでに名を成し、東京に半年、金沢に半年という生活をしていた。金沢における文運復興の機運は目ざましく、五種以上の同人雑誌が発刊され、土地の新聞の文芸欄も、異常な活気を呈していた。

のちに考古学を専攻した私の弟なども、この熱に浮かされ、中学時代にすでに同人雑誌を出して短編をいくつか発表していた。その一つが芥川竜之介に認められ、弟は菊池寛のところで横光利一などと一緒に、ごろごろしていた時代もあった。