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けいまのげんそう

桂馬の幻想

坂口 安吾

「小説新潮 第八巻第一六号」1954(昭和29)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,784 字 · 28 页

青空文庫

ミコや占いという品格ある客商売もやってるそうだがそのときはどの種の言葉遣いを用いるのかと、野村はそぞろ興を催したほどであった。

野村は娘に横溢している陰鬱な殺気が気がかりになった。もしも木戸が再びここを訪れてその第一感にからまる疑惑を明らかにした場合、そしてその疑惑が的を射たものであった場合、木戸の運命がどういうことになるかと考えてみたのである。

そこで野村はその足で木戸の対局を主催した新聞社の支局を訪れ、その間の事情について心当りになるような出来事がなかったか尋ねてみた。

「その対局はいつでしたか」

「昨年十月の六七日です」

「さっそく調査して御返事しましょう」

翌日、電話で返事がとどいた。

「茶店のオヤジサンは対局の翌日病死しておりますね」

「他殺ではないのですか」

「いえ、明らかに病死です。医者の証明がありますから。その医者は警察医でもありますから、まちがいはありません。娘が病気の父親を大八車につんで、まだ夜明け前に医者へ連れてきたそうです。そのときはまだ息があったそうですが、病院へかつぎこまれて五分か十分で死んだそうです。つまり、あなたが御覧になった戸締りの家は、その留守中に当るわけです。