轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くわのむしとこせがれ
桑の虫と小伜
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,760 字 · 4 页
私の故郷の家の、うしろの方に森に囲まれた古沼がある。西側は、欅や椋、榎などの大樹が生い茂り、北側は、濃い竹林が掩いかぶさっている。東側は厚い桑園に続いていて、南側だけが、わずかに野道に接しているが、一人で釣っているには、薄気味が悪過ぎる。
そこには、鮒と鯰が数多く棲んでいる。十一、二歳になる私の伜は、学校から帰ってくると、おやつを噛み噛み、釣り竿を担いでその沼へ出かけて行った。ある秋の日、この小伜がその古沼から大きな鮒を、一貫目近いほど釣ってきた。伜は、息をはずませながら、手柄を誇るのであった。
『それは偉い――ところで、餌はいつもの通り、みみずを使ったのか』
と、問うてみた。
『みみずじゃない、桑の虫だよ』
『なんだ、桑の虫だ? そんなものが餌になるのか』
『父さん、知らないのかい。駄目だねえ』
『ほんとうか』
『僕、うそ言わないよ。今日はじめて使ってみたんだ』
伜が、こう答えて語るのを聞くと、その日は餌のみみずが少なかったのだが、鈎を入れると、次から次へ口細に取られてしまって、餌が一匹もなくなった。困り果てて、ぼんやり沼の面を眺めていると、対岸に生えている大きな榎の枝から一匹の小さな青虫が、糸をひいて垂れ下がってきた。