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うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

歌意は歌詞と共に、能楽の気品情操を一歩も出でない古風なもので月並と云えば、それまでであるが、翁はそれを短冊に自筆して人に与えるのがなかなかの楽みであったらしい。気が向くと弟子の帰りを待たしておいて悠々と墨を磨りながら一二枚宛書いて与えた。

因に翁の和歌は誰かに師事したものには相違なかったが、その師が誰であったかは遺憾ながら詳でない。宇佐元緒、大熊浅次郎両氏の談によると有名な大隈言道氏は、翁の存命中、翁の住家に近い薬院今泉に住んでいたから、翁も師事していたかも知れない。その後、言道氏の旧宅に小金丸金生氏が住んでいて、この人に師事していたことはたしかであったという。なおこの他に末永茂世氏が春吉に住んでいたというが、この人に学んだかどうかは詳でない。

福岡の人林大寿氏は奇特の人で、只圓翁の自筆の短冊数十葉を蒐集し、同翁の門下生に分与しようとされたものが現在故あって一纏めにして古賀得四郎氏の手許に預けられている。古賀氏の尽力で、表装されて只圓翁肉筆の歌集として世に残る筈である。翁の歌風を知るには誠に便宜と思うからその和歌を左に掲げておく。

行路荻               (八十七歳時代)