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うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

東瀛禅師に参禅し南坊流の茶道を究め南坊録を全写し大乗寺山内の居に茶室を営まれ候。(中略)同庵の茶室の炉縁は奥州征討の際若松城下よりの分捕として有名なりしが、今は其の茶室の跡もなく炉縁も何処へ伝はり候や不明、姉妹共故人となられ其後の事存じ申さず候。只圓翁の茶事に疎かりし事は御説の通りに候。そこに只圓翁の尊さが出て来るのに候。只圓翁の茶の手前は決してうまいものにては無かりし筈に候。それに唯翁が茶杓の一枝を手に取りて構へられたる形のみが厳然として寸毫の隙を見せざる其の不思議さは何の姿に候ぞと人々はこの点を驚嘆せしものに候。南坊流の始祖南坊禅師は茶道の堕落を慨して茶事を捨て去つて再び世に出でず。その終る処を知らず候。茶道は能楽以上の技巧の末に走り富裕人の弄びものに堕ちつくし全く其精神を亡し候。斯る世に芸術の神とも仰ぐ可き能楽家只圓翁が茶道に接すれば自然に紛々たる技巧の堕気を破つて卓然その神をこの茶杓の形に示現せしめしものと存候。(下略)」

又翁が博多北船の梅津朔造氏宅に出向いた際、折節山笠の稚児流れの太鼓を大勢の子供が寄ってたたいているのを、翁が立寄って指の先で撥を作って打ち方を指導していた姿が、何ともいえず神々しかったという逸話もある。