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うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

打ち殺せ打ち殺せ」

と指をさして逃げまわった。

◇

翁の家の門は槙の生垣の間に在る、小さな土壁の屋形門であった。只圓翁の筆跡で書いた古い表札が一枚打って在った。敬神家の翁の仕業であろう、傍に大きい、小さい、色々の御守護札が貼り付けてあった。

或る日の事、その門の敷居を跨ぐと、翁が南天の根の草を※(「てへん+劣」、第3水準1-84-77)っていたので、

「先生。きょうは朔造(梅津)さんは病気で稽古を休みますと言伝がありました」

と云ったら、翁は「ウフウフ」と微苦笑して、

「今の若い者は弱いけに詰まらん」

と云った。その時の朔造氏は六十近かったと思う。

この話を帰ってから中風にかかっていた祖父灌園に話したら、泣き中風の祖父は叶わぬ口で、

「先生はイツモ御元気じゃのう。ありがたい事じゃ」

と云ってメソメソ泣き出した。

◇

翁はよく網打ちに行った。それも目堰網といって一番網目の小さい網をセッセと自分で繕って、那珂川の砂洲を渡り歩いたものであった。

その扮装は古手拭で禿頭に頬冠りをした上から古い小さい竹の子笠を冠り、紺のツギハギ着の尻をからげて古足袋を穿いた跣足で、腰に魚籠を括り付けていた。